料理とワインの食卓(イメージ)
※イメージ(AIで作成)

「合う」に、決まった答えはありません

ワインと料理の組み合わせは、フランス語で「マリアージュ(結婚)」とも呼ばれます。ただ、「この料理にはこのワイン」という絶対の決まりはありません。料理とワインの相性を研究した日本の研究者も、これまでの提案の多くは経験にもとづくもので、科学的な研究は少ないと書いています(2012年)。

同じ研究者は、相性のよい組み合わせを、次の3つの形に分けています。

  1. 似たものどうし:性質の似たものを合わせて、おたがいを引き立てる
  2. 反対のものどうし:性質のちがうものを合わせて、釣り合いをとる
  3. 新しい味:合わせることで、どちらにもなかった味わいが生まれる

このページでは、ワインやチーズの産地の団体、公的機関、大学などの研究で紹介されている考え方と例を集めました。最後は、ご自分の「おいしい」がいちばんです。迷ったときの手がかりにしてください。

相性のよい組み合わせの3つの形
  • 似たものどうし性質の似たものを合わせて、おたがいを引き立てる
  • 反対のものどうし性質のちがうものを合わせて、釣り合いをとる
  • 新しい味合わせることで、どちらにもなかった味わいが生まれる

考え方1 味の強さをそろえる

いちばん基本になるのが、料理とワインの「強さ」をそろえることです。

ドイツワインインスティトゥート(ドイツワインの広報機関)は、チーズとワインは、だいたい同じくらいの強さか、同じくらいおだやかなものを合わせるとよいとしています。繊細な香りのチーズには控えめで繊細なワインを、熟成の進んだチーズほどコクのあるワインを、とすすめています。ボルドーワイン委員会も、チーズが熟成しているほど、しっかりしたワインを合わせるとよいと紹介しています。

魚料理でも同じです。ドイツワインインスティトゥートは、包み焼きのようなやさしい味の魚にはすっきりした白を、マリネしたり香辛料をきかせたりした魚には、より力強い白を合わせる例を挙げています。

考え方2 味の要素ごとに見る

味の要素ごとの手がかり
  • 酸味こってりしたものを、すっきりさせる
  • 甘みデザートより、ワインのほうを甘く
  • 塩気塩気の強いものには、甘いワインで釣り合いを
  • 脂渋みと脂は、おたがいを打ち消し合う
  • うま味合わせると、ふくらむ(相乗効果)
  • 魚介生臭さの原因の一つは、ワインの「鉄」
  • 辛さアルコールは辛みを強める。軽めのワインを

酸味:こってりしたものを、すっきりさせる

  • ドイツワインインスティトゥートは、酸味のしっかりしたワインはクリーミーなチーズによく合う一方、かためのチーズでは苦みを感じさせることがある、としています。
  • ブルゴーニュワイン委員会は、濃厚なクリームを加えた白カビのチーズ(ブリア・サヴァラン)に、泡のワイン(クレマン・ド・ブルゴーニュ)の酸味が、濃厚さと釣り合うと紹介しています。

甘み:料理より、ワインを甘く

デザートに合わせるときは、デザートよりワインのほうが甘いものを選ぶのが基本です。ボルドーワイン委員会もこの考え方を紹介しています。くわしくは甘口ワインのページでご紹介しています。

塩気:甘いワインで釣り合いをとる

ドイツワインインスティトゥートは、酸味や塩気の強いチーズ、味のとても濃いチーズには、釣り合いをとるために甘口のワインが必要だとしています。塩気の強い青カビのチーズ(ロックフォール)に、甘口のソーテルヌを合わせる組み合わせは、ボルドーワイン委員会も紹介しています。

脂:渋みと脂は、反対のさわり心地

赤ワインの渋みは、口の中をきゅっと乾かす「さわり心地」です。アメリカのモネル化学感覚研究所などの研究グループは、渋みのある飲みものと脂のある食べもの(干し肉)を交互に口にすると、渋みのざらざらした感じと、脂のぬるっとした感じが、おたがいを打ち消し合うことを示しました(2012年)。脂ののった肉料理と渋みのある赤ワインの組み合わせを考えるときの、手がかりのひとつになりそうです。

ただし、いつも渋みが脂に勝つわけではありません。ブルゴーニュワイン委員会は、においの強いウォッシュタイプのチーズは、どんなワインも負かしてしまうことがあり、渋みの強い赤ワインと合わせると、脂のせいで渋みがとがり、苦い後味が残ることもある、と注意しています。ドイツワインインスティトゥートは、かたいチーズほど、ワインの渋みを受け止められるとしています。

うま味:合わせると、ふくらむ

和食のだしでは、昆布に含まれる「グルタミン酸」と、かつお節に含まれる「イノシン酸」が合わさって、うま味が引き立ちます(うま味の相乗効果)。

デンマークのコペンハーゲン大学の研究グループは、シャンパーニュと生ガキがよく合うと言われるわけを、この相乗効果で説明しました(2020年)。シャンパーニュでは、瓶の中で役目を終えた酵母からグルタミン酸が出てきます。そこに、カキの身に含まれる、イノシン酸と同じなかまのうま味のもと(核酸)が合わさります。同じグループは31本のお酒を調べ、うま味のもとがもっとも多かったのは日本酒で、シャンパーニュやワインにも含まれていたと報告しています(2021年)。

魚介:生臭さの原因は「鉄」

「魚に赤ワインを合わせると生臭くなる」とよく言われます。メルシャンの研究者たちは、この原因の一つが、ワインにごくわずかに含まれる鉄(2価の鉄イオン)であることを突き止めました(2009年)。鉄が魚介の脂の分解を進め、生臭さや金属のようなにおいのもとができるというしくみです。ホタテの干物を使った試験では、ワインの鉄が1リットルあたり1mg以上になると、生臭さが強く感じられました。

鉄の量は、ぶどうの品種や産地だけでは決まらず、ワインによってさまざまです。渋みの少ない白ワインでも、魚介とぶつかることがあります。「白なら大丈夫、赤ならだめ」と決めつけず、気になったときはワインを替えてみてください。

辛さ:アルコールは辛みを強める

アルコールは、唐辛子の辛み(カプサイシン)を感じる受容体のはたらきを強めることが、研究で示されています(2002年)。辛い料理には、アルコール度数の高いワインより、軽めのワインを選ぶのも一つの方法です。ドイツワインインスティトゥートは、魚介のタイカレーに、ほんのり甘みの残る香り高い白(ショイレーベ)を合わせる例を挙げています。

考え方3 同じ土地のものどうし

ドイツワインインスティトゥートは、同じ土地のチーズとワインはよく合うことが多いとしています。ボルドーワイン委員会も、一つの産地にしぼってチーズとワインを選ぶ方法を紹介しています。

チーズやワインの産地の団体も、地元どうしの組み合わせを紹介しています。

チーズ紹介されているワイン紹介している団体
クロタン・ド・シャヴィニョル(ロワール地方の山羊のチーズ)サンセール、ロワール地方の中央部のワインクロタン・ド・シャヴィニョルの生産者団体
コンテ(ジュラ地方のハードタイプ)ヴァン・ジョーヌ(ジュラ地方の、酵母の膜の下で熟成させる白ワイン)ジュラワイン委員会
コンテシャブリ、ビュジェのワインコンテのチーズの生産者団体
ロックフォール(南フランスの羊の青カビ)ソーテルヌ(ボルドーの甘口の白)ボルドーワイン委員会
ブリア・サヴァラン(白カビ)クレマン・ド・ブルゴーニュブルゴーニュワイン委員会
モン・ドール(ウォッシュ)若く果実味のある、ブルゴーニュの赤ブルゴーニュワイン委員会

考え方4 主役だけでなく、ソースや味つけを見る

同じ魚や肉でも、ソースや味つけで合うワインは変わります。ドイツワインインスティトゥートは、ムール貝を例に、クリームやトマトなどのソースと合わせる料理には、重すぎない辛口の白を、クリームを使った貝の料理には、まろやかな白(ヴァイスブルグンダー=ピノ・ブラン)を挙げています。

日本の料理なら、味噌やしょうゆも大切な「ソース」です。長野県観光機構の観光サイトでは、軽やかで香り高い白は魚や野菜の料理に、果実味のある赤は肉料理や、味噌・しょうゆなどの発酵調味料を使った料理によく合う、と紹介されています。

チーズとワイン(イメージ)
※イメージ(AIで作成)

チーズのタイプ別の合わせ方

ナチュラルチーズは、造り方によっていくつかのタイプに分けられます。ドイツワインインスティトゥートなどが紹介している組み合わせを、タイプごとにまとめました。

タイプどんなチーズか紹介されている組み合わせの例
フレッシュ熟成させない、水分の多いチーズ。モッツァレッラ、クリームチーズなど乳酸の酸味があるフレッシュチーズには、酸味がおだやかで果実味のある白(ドイツワインインスティトゥート)
白カビ表面に白いカビを育てて熟成させる。カマンベール、ブリーなどほんのりスパイスを感じる白、やや甘口のリースリング、軽めの赤(ピノ・ノワールなど)、泡のワイン(ドイツワインインスティトゥート)。ブリーのようなクリーミーなチーズには、酸味のある辛口の白(ボルドーワイン委員会)
ウォッシュ熟成中に表面を洗ったりブラシをかけたりして、表皮が赤っぽくなる。マンステール、エポワスなどゲヴュルツトラミネール(ドイツワインインスティトゥート)。においの強いものは渋みの強い赤と合わせにくい(ブルゴーニュワイン委員会)
青カビ中に青カビを育てる。ロックフォール、ゴルゴンゾーラなどやや甘口〜極甘口のリースリング(ドイツワインインスティトゥート)。ロックフォールにソーテルヌ(ボルドーワイン委員会)
ハード・セミハード押し固めて造り、数か月以上かけて熟成させるものが多い。コンテ、グリュイエール、ゴーダ、パルミジャーノ・レッジャーノなど若くおだやかなものには、若くて果実味のある辛口の白や軽い赤。熟成して味の濃いものには、コクのある白や、しっかりした赤(ドイツワインインスティトゥート)。コンテに若いボルドーの赤(ボルドーワイン委員会)
シェーヴル(山羊)山羊の乳だけで造る。小ぶりなものが多い若く軽やかな白や、フレッシュなロゼ(ドイツワインインスティトゥート)。ソーヴィニヨン・ブラン(ボルドーワイン委員会)。若いものには酸味のいきいきした若い白、熟成したものには、まろやかに熟成した白(ブルゴーニュワイン委員会)

同じタイプでも、熟成の具合で味わいは大きく変わります。たとえばクロタン・ド・シャヴィニョルは、若いうちは軽やかで花のような風味、熟成が進むとクルミやヘーゼルナッツのような風味になり、さらに熟成させたものは力強くなると、生産者団体が紹介しています。チーズの熟成が進むほどワインもしっかりしたものに、という「考え方1」を思い出してください。

信州の食卓とワイン(イメージ)
※イメージ(AIで作成)

和食・信州の食べものと

和食とワイン

農林水産省は、和食の特徴として、素材の持ち味を大切にすることや、うま味を上手に使うことを挙げています。素材の味を生かした料理に合わせるときは、「考え方1」の強さをそろえることが手がかりになります。

山梨県のやまなし観光推進機構のコラムでは、日本の白ぶどう「甲州」のワインが、料理に寄り添って邪魔をしない、と紹介されています。魚介と合わせるときは、上の「鉄」の話も手がかりになります。

信州の食べもの

長野県観光機構の観光サイトでは、信州サーモンや、春の山菜、秋のきのこ、ジビエなどの食材を長野県のワイン(NAGANO WINE)と合わせて、その土地ならではの組み合わせを楽しむことが紹介されています。「考え方3」の同じ土地どうしです。

食べものどんな料理か(農林水産省・長野県などの紹介から)ワインと合わせるなら(紹介例/店からのご提案)
信州サーモン長野県水産試験場が、ニジマスとブラウントラウトをかけ合わせて生んだ魚。きめ細かな身に、ほどよい脂紹介例:長野県観光機構のサイトでは、塩尻市のワイナリーの泡のワインに、信州サーモンのカルパッチョを合わせる例が紹介されています
鯉こく(川魚)佐久市に伝わる、筒切りのコイを味噌で煮た料理。好みで粉山椒をかける店からのご提案:味つけの主役は味噌なので、「考え方4」にならって、味噌の料理に合わせるつもりで選んでみてはいかがでしょう
信州ジビエ(シカ肉など)シカ肉は、牛肉などより脂質が少なく、あっさりした味(長野県の広報誌)紹介例:長野県観光機構のサイトで、NAGANO WINE と合わせる食材として紹介されています。店からのご提案:料理の味つけの強さに合わせて選んでみてはいかがでしょう
山菜・きのこ春の山菜、秋のきのこ紹介例:長野県観光機構のサイトで、NAGANO WINE と合わせる食材として紹介されています
信州そばだし・みりん・しょうゆのつゆに、ねぎとわさびで食べるのが一般的(農林水産省)店からのご提案:「考え方1」にならって、つゆや薬味の強さに合わせて、軽やかなものから試してみてはいかがでしょう
おやき小麦粉などの皮で、味噌やしょうゆで味つけした野菜などを包み、焼いたり蒸したりする(農林水産省)店からのご提案:中の具と味つけで選ぶ「考え方4」の出番です。たとえば野菜の具なら白、味噌の味が濃いものなら赤、と試してみるのもおもしろいかもしれません
野沢菜漬乳酸発酵が進むと、べっこう色になり、春先の古漬けは酸味が強くなる(農林水産省)店からのご提案:漬かり具合で酸味や味の強さが変わるので、浅いものと古漬けとで、ワインを替えてみるのもおもしろいかもしれません
馬刺し長野県は、熊本県・福島県に次いで馬肉を食べる文化が根づく土地。味噌や生姜じょうゆで食べる紹介例:長野県観光機構のサイトでは、たてがみなどを日本酒と楽しむ例が紹介されています

「店からのご提案」は、公的な資料で紹介されている組み合わせではありません。このページの考え方をあてはめた、店からの提案です。そば・おやき・野沢菜・鯉こく・馬刺しについては、ワインとの組み合わせを紹介した公的な資料が見つかりませんでした。地元の日本酒と合わせるのも、もちろんおすすめです。

迷ったら、お店でご相談ください

「今夜はこの料理を作るつもり」「このチーズをいただいた」など、料理や食材を教えていただければ、合いそうな1本を一緒にお探しします。店では、シャブリやソーテルヌ、アルザスのゲヴュルツトラミネール、イタリアのランブルスコ(微発泡のワイン)、塩尻市や上田市、宮田村などの長野県のワインもお取り扱いしています。塩尻市のアルプスの泡のワイン「アルプス MdV oasis 3(スパークリング)」もございます。

このページの出典(参考にした資料 30件)

このページは、国や公的機関、業界団体、造り手、研究機関などの資料で確かめたことをもとに、店の言葉でまとめています。リンク先は2026年10月に確かめたもので、その後に移ったり変わったりしていることがあります。外国語の資料もあります。

  1. 田村隆幸「料理との相性からの製造技術へのアプローチ」生物工学 第90巻 第5号 sbj.or.jp
  2. Tamura ほか「Iron Is an Essential Cause of Fishy Aftertaste Formation in Wine and Seafood Pairing」J. Agric. Food Chem. 57(18), 8550 (2009), DOI 10.1021/jf901656k sciencedaily.com
  3. ドイツワインインスティトゥート「Käse & Wein」 deutscheweine.de
  4. ドイツワインインスティトゥート winesofgermany.com
  5. ドイツワインインスティトゥート「Wein trifft Meer」 deutscheweine.de
  6. ボルドーワイン委員会「Cheese & wine pairings : the ultimate guide」 bordeaux.com
  7. ボルドーワイン委員会「Pairing Bordeaux wines with dessert」 bordeaux.com
  8. ブルゴーニュワイン委員会「Regional cheeses and Bourgogne wines」 bourgogne-wines.com
  9. Peyrot des Gachons ほか「Opponency of astringent and fat sensations」Current Biology 22(19), 2012 sciencedaily.com
  10. ncbi.nlm.nih.gov
  11. futurity.org
  12. コペンハーゲン大学 2021年発表 science.ku.dk
  13. Trevisani ほか「Ethanol elicits and potentiates nociceptor responses via the vanilloid receptor-1」Nature Neuroscience 5(6), 546–551 (2002 nature.com
  14. AOP Chavignolのパンフレット crottindechavignol.fr
  15. ジュラワイン委員会「Jura Wines」ガイド jura-vins.com
  16. コンテ委員会「Accorder le Comté」 comte.com
  17. produits-laitiers.com の教育用資料「Les fromages par famille」 static.produits-laitiers.com
  18. 農畜産業振興機構「ナチュラルチーズを楽しもう」 alic.go.jp
  19. 農林水産省「和食ワールドチャレンジ 3.だし・うま味について」 maff.go.jp
  20. 農林水産省「和食」 maff.go.jp
  21. まなし観光推進機構「ワインコラム03」 yamanashi-kankou.jp
  22. 長野県観光機構「Go! NAGANO」 go-nagano.net
  23. Go! NAGANO go-nagano.net
  24. 長野県水産試験場 pref.nagano.lg.jp
  25. 農林水産省「うちの郷土料理」 maff.go.jp
  26. 長野県「広報 インターネット版 Vol.10」2013年11月 pref.nagano.lg.jp
  27. 農林水産省「うちの郷土料理」 maff.go.jp
  28. 農林水産省 maff.go.jp
  29. 農林水産省 maff.go.jp
  30. Go! NAGANO go-nagano.net

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