冬の酒蔵で、蒸したお米を扱う蔵人たち(イメージ)
※イメージ(AIで作成)

お米と水から、日本酒ができるまで

日本酒の原料は、お米と米こうじと水(お酒によっては醸造アルコール)です。

お米を磨くところから瓶に詰めるまで、およそ60日。冬の寒い時期に、蔵人たちが手間をかけて造ります。

ここでは、その流れを順番にご紹介します。

日本酒ができるまでお米・米こうじ・水から、およそ60日

原料を整える

  1. 精米せいまいお米の外側を削って磨く
  2. 洗米・浸漬せんまい・しんせき洗って水を吸わせる
  3. 蒸米じょうまい甑(こしき)などで蒸す
  4. 製麹せいぎく麹室で約2日、こうじを育てる

仕込む

  1. 酒母しゅぼ酵母をたくさん増やす
  2. もろみ三段仕込み4日かけて3回に分けて仕込む

仕上げる

  1. 上槽じょうそうしぼって、お酒と酒かすに分ける
  2. おり引き・ろ過すっきりさせる
  3. 火入れひいれ60〜65℃ほどに温めて落ち着かせる
  4. 貯蔵・熟成半年から1年ほど寝かせる
  5. 割水・瓶詰めわりみず・びんづめ15%ほどに調えて詰める

並行複発酵(へいこうふくはっこう)

もろみのタンクの中では、こうじがでんぷんを糖に変える「糖化」と、酵母が糖をアルコールに変える「発酵」が同時に進みます。6〜15℃ほどで、20〜30日ほど。

1. 精米(せいまい) お米を磨く

酒造りでは、玄米の外側を削った白米を使います。お米の外側に近いところほど、たんぱく質や脂肪が多く含まれています。たんぱく質が多すぎるとくどい味に、脂肪は吟醸酒の華やかな香りが生まれるのを妨げるため、外側を削って使います。

ふだん食べるお米は1割ほど削りますが、日本酒では、普通のお酒で3割ほど、吟醸酒では4割以上を削ります。

削ったあとに残った割合が「精米歩合」です。精米歩合70%の白米を1kg作るには、玄米が1.4kgあまり必要です。

2. 洗米・浸漬(せんまい・しんせき) 洗って水を吸わせる

磨いたお米についたぬかを洗い落とし、水に浸して水を吸わせます。

浸す時間は、お米の品種や硬さ、精米歩合によって、数分から数時間までさまざまです。よく磨いたお米は水を吸うのが早いため、秒単位で時間を計りながら吸わせます(限定吸水)。

3. 蒸米(じょうまい) 蒸す

水を吸わせたお米を、炊くのではなく蒸気で蒸します。おこわのように、外は硬く中はやわらかく、一粒ずつばらばらになるのが良い蒸し米です。

昔ながらの木の桶「甑(こしき)」を使う蔵と、ベルトコンベアで運びながら蒸す機械を使う蔵があります。

4. 製麹(せいぎく) こうじを造る

蒸し米の一部に、こうじ菌(黄こうじ菌)の胞子をふりかけ、30℃ほどに暖めた「麹室(こうじむろ)」で約2日(50時間近く)かけて育てます。

こうじは、お米のでんぷんを糖に変える働きを持ちます。酒造りの中でいちばん手間がかかり、むずかしい作業とされ、経験を積んだ蔵人が受け持つことが多い工程です。

こうじにするお米は、全体の15〜25%ほどが目安です。

5. 酒母(しゅぼ)造り 酵母を増やす

こうじ・蒸し米・水に酵母を加え、アルコールを生み出す酵母をたくさん増やしたものが「酒母(もと)」です。

酒母の造り方には、主に3つあります。

造り方どんな方法か日数の目安
生酛(きもと)自然の乳酸菌に乳酸を作らせる昔ながらの方法。桶の中でお米をすりつぶす「山卸し(やまおろし)」をする約1か月
山廃(やまはい)生酛の「山卸し」をやめた方法(山卸廃止酛)。乳酸菌の働きを使う点は同じ約1か月
速醸(そくじょう)はじめから乳酸を加える方法。雑菌に汚染されにくい生酛・山廃の約半分

乳酸は、酵母の苦手な雑菌が増えるのを抑えてくれます。山廃と速醸は、明治37年(1904年)にできた国の醸造試験所で生み出されました。

もろみの桶を櫂でかき混ぜる蔵人(イメージ)
※イメージ(AIで作成)

6. もろみ 三回に分けて仕込む

酒母に、こうじ・蒸し米・水を加えて大きなタンクで発酵させたものが「もろみ」です。

いっぺんに加えず、4日かけて3回に分けて仕込みます(三段仕込み)。

  • 1日目「初添(はつぞえ)」:全体の約6分の1
  • 2日目「踊り(おどり)」:仕込みを休み、酵母が増えるのを待つ
  • 3日目「仲添(なかぞえ)」:全体の約3分の1
  • 4日目「留添(とめぞえ)」:全体の約2分の1

少しずつ量を増やすのは、酵母の濃さが薄まらないようにして、発酵を安全に進めるためです。

もろみは6〜15℃ほどの低い温度で、20〜30日ほどかけて発酵します。

三段仕込み 4日かけて3回に分けて全体の量に対して、仕込む割合
  • 1日目 初添約6分の1
  • 2日目 踊り休み
  • 3日目 仲添約3分の1
  • 4日目 留添約2分の1

2日目の「踊り」は仕込みを休み、酵母が増えるのを待ちます。少しずつ量を増やすのは、酵母の濃さが薄まらないようにして、発酵を安全に進めるためです。

日本酒の特徴「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」

もろみの中では、こうじがお米のでんぷんを糖に変える「糖化」と、酵母が糖をアルコールに変える「発酵」が、同じタンクの中で同時に進みます。

これを並行複発酵といい、日本酒の大きな特徴です。発酵が終わるころには、アルコール分が20%近くにもなります。

↑ 図にもどる

7. 上槽(じょうそう) しぼる

発酵を終えたもろみをしぼり、お酒(液体)と酒かす(固体)に分けます。しぼり方には主に3つあります。

  • 自動圧搾機(あっさくき):今もっとも広く使われる方法。空気にふれにくく、効率よくしぼれます。
  • 槽搾り(ふなしぼり):もろみを袋に詰めて「槽(ふね)」に並べ、上から圧をかけて、時間をかけておだやかにしぼります。
  • 袋吊り(ふくろづり):もろみを入れた袋を吊るし、圧をかけずに、自然にしたたり落ちる「しずく」だけを集めます。

しぼり始めに出てくる白くにごったお酒を「あらばしり」、そのあとを「中垂れ(なかだれ)」、最後に圧をかけてしぼり出すお酒を「責め(せめ)」と呼びます。

8. おり引き・ろ過 すっきりさせる

しぼったばかりのお酒は少しにごっています。数日置いて、沈んだ「おり」と上澄みを分け(おり引き)、ろ過して透明にします。

ろ過をしないで出荷するお酒が「無ろ過」です。

9. 火入れ(ひいれ) 温めて落ち着かせる

お酒を60〜65℃ほどに温めることを「火入れ」といいます。微生物を殺菌し、香りや味を変えてしまう酵素の働きを止めて、品質を安定させるためです。

ふつうは、貯蔵する前と瓶に詰める前の2回行います。

  • 火入れを一度もしないお酒が「生酒」
  • 貯蔵前だけ火入れをしたお酒が「生詰め酒」
  • 貯蔵前は火入れをせず、瓶詰めのときだけ火入れしたお酒が「生貯蔵酒」
  • 秋に出る「ひやおろし」は、貯蔵前に一度だけ火入れをし、二度目をしないで出荷するお酒です

10. 貯蔵・熟成 寝かせる

火入れしたお酒をタンクで半年から1年ほど寝かせ、味をととのえます。冬から春に造ったお酒は、夏を越して秋ごろに味がまろやかになります(秋あがり)。

11. 割水(わりみず)・瓶詰め 仕上げる

貯蔵中のお酒はアルコール分が20%ほどあります。出荷前に水を加えて15%ほどに調えるのが「割水」です。割水をしないお酒が「原酒」です。

最後に、もう一度火入れをして瓶に詰め、蔵から出荷されます。

冬の夜、仕込みの桶をのぞきこむ杜氏(イメージ)
※イメージ(AIで作成)

冬に造る「寒造り(かんづくり)」

日本酒が冬に造られるようになったのは、江戸時代からです。寛文7年(1667年)に幕府が秋のお彼岸ごろからの新酒造りを禁じ、その決まりがくり返されるうちに、冬の造りに集まっていったと考えられています。冬に造ったお酒は質が良かったことも理由とされます。

杜氏(とうじ)と蔵人(くらびと)

酒造りの最高責任者が「杜氏」、杜氏のもとで働く人たちが「蔵人」です。

昔は、冬の農閑期に各地から出稼ぎに来る職人たちが酒造りを担い、南部杜氏・越後杜氏・能登杜氏など、各地に杜氏の集団が生まれました。今は、蔵の社員が杜氏を務める「社員杜氏」や、蔵元自身が造る「蔵元杜氏」も増えています。

酒蔵ものがたりで読む

三代目が、ラジオで酒造りの現場を語った回です。

  • 第1回「ひやおろし」
  • 第14回「無垢の酒」(冬の造り) 2027年1月22日に公開予定
  • 第15回「立春朝しぼり」 2027年1月29日に公開予定
  • 第16回「無濾過と素濾過」 2027年2月12日に公開予定
このページの出典(参考にした資料 9件)

このページは、国や公的機関、業界団体、造り手、研究機関などの資料で確かめたことをもとに、店の言葉でまとめています。リンク先は2026年10月に確かめたもので、その後に移ったり変わったりしていることがあります。外国語の資料もあります。

  1. 日本酒造組合中央会「日本酒の製造工程」 japansake.or.jp
  2. 日本酒造組合中央会「日本酒用語集」 japansake.or.jp
  3. 月桂冠 gekkeikan.co.jp
  4. 白鶴 hakutsuru.co.jp
  5. 酒類総合研究所「お酒のはなし 清酒1」 nrib.go.jp
  6. 国税庁 nta.go.jp
  7. 酒類総合研究所「清酒の商品ラベルの読み方」 nrib.go.jp
  8. 日本酒造組合中央会 japansake.or.jp
  9. 月桂冠「原料米の精米と蒸し」 gekkeikan.co.jp

20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。
妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。
飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は適量を。