芋焼酎は、さつまいもの甘い香りのお酒です

芋焼酎は、さつまいもを主な原料にした本格焼酎です。

こうじに米を使っていても、主な原料がさつまいもなら「芋焼酎」⁠と呼ばれます。

さつまいも特有の甘い香りと、まろやかな甘みが持ち味です。

芋の品種によって、香りと味わいが大きく変わります。

焼酎の原料になる芋には、ほかにじゃがいも・長いも・里いもなどもありますが、造られる量はさつまいもが多く、「芋焼酎」⁠といえば、ふつうはさつまいもの焼酎のことです。

おもな産地は、鹿児島県と宮崎県です。

さつまいもと薩摩の焼酎

琉球から伝わったさつまいも

さつまいもは、琉球(沖縄)⁠を経て鹿児島へ伝わりました。

鹿児島へは、17世紀の終わりから18世紀のはじめごろに、琉球から伝わったとされます。

種子島の島主や、山川(今の指宿市)⁠の前田利右衛門(まえだ りえもん)⁠が琉球から持ち帰り、広めたことが知られています。

薩摩で初めて育てられたので、「さつまいも」⁠と呼ばれるようになりました。

シラス台地と芋焼酎

鹿児島には、火山の灰や軽石が積もった「シラス台地」⁠が広がっています。

水はけがよく、米づくりには向かない土地が多い一方で、さつまいもはよく育ちました。

こうして鹿児島は、さつまいもで造る芋焼酎の産地になりました。

今も、鹿児島県はさつまいもの日本一の産地です。

杜氏の技と、明治からの工夫

鹿児島の焼酎造りの技は、黒瀬杜氏(今の南さつま市笠沙町)⁠と阿多杜氏(南さつま市金峰町)⁠によって確立され、受け継がれてきました。

明治の時代からは、黒こうじ・白こうじを使うこと、二次仕込みのやり方、こうじを造る道具や蒸留機の改良が進み、今の芋焼酎の形ができあがりました(くわしくは 焼酎の基礎 へ)。

芋焼酎ができるまで

芋焼酎ができるまで芋の色で、香りが変わる
  1. こうじ造りこうじづくり米(芋のこうじを使うものもある)⁠を蒸して、こうじ菌を育てる。かかる時間約2日
  2. 一次もろみいちじもろみこうじに水と酵母を加えて、酵母を増やす。かかる時間約30℃で3〜8日
  3. 芋を選んで、蒸すいもをむす届いたさつまいもを選り分け、蒸して砕く。さつまいもは水分が多く傷みやすいので、とれる秋を中心に仕込む。黄金千貫黄色・白っぽい芋。芋焼酎でいちばん広く使われる品種紫の芋中まで紫色の芋(ムラサキマサリ、アヤムラサキなど)オレンジの芋中がオレンジ色の芋
  4. 二次もろみにじもろみ一次もろみに、蒸したさつまいもと水を加えて発酵させる。かかる時間約2週間
  5. 蒸留じょうりゅう単式蒸留機で1回だけ蒸留する。芋焼酎は常圧蒸留が多く、芋の香りがよく残る。
  6. 香りと味わいかおり芋の品種で、香りと味わいが大きく変わる。黄金千貫芋らしい香りと、まろやかな味わい紫の芋ヨーグルトのような風味オレンジの芋にんじんのような風味が出るものが多い
  7. 貯蔵・割水ちょぞう・わりみず寝かせてから水を加え、多くは20度か25度にして瓶に詰める。

芋の色や品種で香りの成分の量がちがうことが、研究で分かっています(紫は紫の色素、オレンジはオレンジの色素が多いほど、その風味が強くなります)。

芋焼酎は、こうじで一次もろみを造ったあと、蒸したさつまいもを加えて二次もろみを造り、蒸留します。

  1. こうじ造り:米(芋のこうじを使うものもあります)⁠を蒸して、こうじ菌を育てます(約2日)。
  2. 一次もろみ:こうじに水と酵母を加えて、酵母を増やします(約30℃で3〜8日)。
  3. 芋を選んで、蒸す:届いたさつまいもを選り分け、蒸して砕きます。
  4. 二次もろみ:一次もろみに、蒸したさつまいもと水を加えて発酵させます(約2週間)。
  5. 蒸留:単式蒸留機で1回だけ蒸留します。芋焼酎は、ふつうの気圧のまま蒸留する「常圧蒸留」⁠が多く、芋の香りがよく残ります。
  6. 貯蔵・割水:寝かせてから、水を加えて、多くは20度か25度にして瓶に詰めます。

芋のとれる季節に仕込みます

さつまいもは水分が多く、傷みやすい原料です。

そのため芋焼酎は、さつまいもがとれる秋を中心に仕込まれます。

芋の品種で、香りが変わる

芋焼酎の味わいは、使うさつまいもの品種で大きく変わります。

芋の色おもな品種香りと味わい
黄色・白っぽい芋黄金千貫(こがねせんがん)芋焼酎でいちばん広く使われる品種。芋らしい香りと、まろやかな味わい
黄色・白っぽい芋ジョイホワイト焼酎用に生まれた品種。黄金千貫とはちがう味わい
黄色・白っぽい芋サツママサリ焼酎用に生まれた品種。甘くフルーティーな香りと、すっきりした味
紫の芋ムラサキマサリ、アヤムラサキ など中まで紫色の芋。ヨーグルトのような風味が出る
オレンジの芋いくつかの品種中がオレンジ色の芋。にんじんのような風味が出るものが多い
甘みの強い芋安納芋(あんのういも)など甘く、香りの強い芋焼酎になる

芋焼酎らしい香りは、さつまいもに含まれる成分が、こうじや酵母のはたらきと蒸留によって、リナロールなどの香りの成分に変わって生まれます。

紫の芋のヨーグルトのような風味は、芋の紫の色素(アントシアニン)⁠が多いほど、オレンジの芋のにんじんのような風味は、芋のオレンジの色素(β-カロテン)⁠が多いほど強くなることが、研究で分かっています。

黒こうじと白こうじ

芋焼酎の多くは、黒こうじか白こうじで造ります。

黒こうじの芋焼酎は、白こうじに比べて香りが複雑で、どっしりとした重みのある味わいになるとされます。

芋焼酎では、黒こうじのほうが原料の芋の個性がよく出る、という研究もあります。

白こうじの芋焼酎は、おだやかで軽やかな飲み口です。

黄こうじ(日本酒のこうじ)⁠で造る芋焼酎もあります(くわしくは 焼酎の基礎 へ)。

GI「薩摩」

「薩摩(さつま)」⁠は、鹿児島県の芋焼酎の地理的表示(GI)⁠です(2005年指定)。

次の決まりを守って造ったものだけが「薩摩」⁠を名乗れます。

  • 芋は、鹿児島県(奄美市・大島郡を除く)⁠でとれたさつまいもだけ
  • こうじは、米か、鹿児島県でとれたさつまいもで造ったものだけ
  • 水は、鹿児島県で採った水だけ
  • 発酵・蒸留・貯蔵・瓶詰めは、鹿児島県の中で行い、単式蒸留機で蒸留する

「薩摩」⁠の芋焼酎は、さつまいも由来の華やかで豊かな香りと、香りによくなじむ甘く濃い味わい、蒸留したばかりでもなめらかな口当たりが特徴とされています。

鹿児島県には、100を超える焼酎の蔵があります。

宮崎の芋焼酎

宮崎県も、芋焼酎の大きな産地です。

宮崎では、県の南部を中心にさつまいもが、北部や山あいでは米・麦・そばが、焼酎の原料に使われてきました。

原料が多彩なのが、宮崎の焼酎の特徴です。

芋焼酎の楽しみ方

芋焼酎の甘い香りは、温めるといっそう豊かになります。

お湯割り、水割り、ロックで楽しまれることが多いお酒です。

  • お湯割り:器に先にお湯を入れ、あとから焼酎を注ぎます。芋の香りがふわりと立ちます。
  • 黒ぢょか:鹿児島では、水で割った焼酎を、薩摩焼の黒い土びん「黒ぢょか」⁠で温めて飲む文化があります。
  • 水割り・ロック:冷やすと、香りが落ち着いて、すっきりと飲めます。

飲み方は、焼酎のおいしい飲み方 でくわしくご紹介します。

店では、鹿児島県・宮崎県をはじめ、いろいろな蔵の芋焼酎をお取り扱いしています。

芋の品種やこうじのちがいで選ぶのも、楽しみ方のひとつです。お気軽にご相談ください。

このページの出典(参考にした資料 23件)

このページは、国や公的機関、業界団体、造り手、研究機関などの資料で確かめたことをもとに、店の言葉でまとめています。リンク先は2026年10月に確かめたもので、その後に移ったり変わったりしていることがあります。外国語の資料もあります。

  1. 酒類総合研究所 情報誌 2021年12月号 特集「焼酎」⁠ nrib.go.jp
  2. 酒類総合研究所「お酒のQ&A 焼酎・ブランデー・ウイスキー」⁠ nrib.go.jp
  3. 国税庁 地理的表示「薩摩」生産基準 nta.go.jp
  4. 国税庁 地理的表示(英語版)⁠ nta.go.jp
  5. 熊本国税局「酒蔵マップ」鹿児島県 nta.go.jp
  6. 日本酒造組合中央会「本格焼酎と泡盛ガイド」本格芋焼酎 guide.honkakushochu-awamori.jp
  7. 日本酒造組合中央会「本格焼酎と泡盛ガイド」薩摩焼酎の歴史 guide.honkakushochu-awamori.jp
  8. 鹿児島県「かごしまブランド さつまいも」⁠ pref.kagoshima.jp
  9. 観光庁 多言語解説文データベース mlit.go.jp
  10. 農研機構 九州沖縄農業研究センター プレスリリース「サツママサリ」⁠ naro.go.jp
  11. 神渡巧・瀬戸口智子「芋焼酎の香りに及ぼすサツマイモ品種の影響」生物工学 89巻12号 sbj.or.jp
  12. 農畜産業振興機構「鹿児島のさつまいもは今」⁠ alic.go.jp
  13. 農畜産業振興機構「原料用さつまいもの品種および生育概況」⁠ alic.go.jp
  14. 特許庁 地域団体商標「宮崎の本格焼酎」⁠ jpo.go.jp
  15. 政府広報オンライン Highlighting Japan 2025年3月号 gov-online.go.jp
  16. 半島暮らし学会「薩摩半島の焼酎蔵を訪ねて」⁠ mlit.go.jp
  17. 鹿児島県工業技術センター・濵田酒造「芋焼酎原料用サツマイモの選抜-新品種サツママサリ」⁠ aist.go.jp
  18. 霧島酒造「サツマイモ発電で地域循環型生産体制を目指す」生物工学 93巻 sbj.or.jp
  19. JWセンター情報 2023.1「霧島酒造」⁠ jwnet.or.jp
  20. 東京国税局「お酒のはなし 焼酎」⁠ nta.go.jp
  21. 鹿児島県工業技術センター 安藤義則「焼酎の個性を,もっと引きだす」生物工学 89巻9号 sbj.or.jp
  22. 農研機構 九州沖縄農研ニュース No.61 naro.go.jp
  23. NPO法人鹿児島グルメ都市企画「Shochu de OMOTENASHI」⁠ pref.kagoshima.jp

20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。
妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。
飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は適量を。