冬の酒蔵で、蒸したお米を扱う蔵人たち(イメージ)
※イメージ(AIで作成)

お米と水から、日本酒ができるまで

日本酒の原料は、お米と米こうじと水(お酒によっては醸造アルコール)⁠です。

お米を磨くところから瓶に詰めるまで、およそ60日。冬の寒い時期に、蔵人たちが手間をかけて造ります。

ここでは、その流れを順番にご紹介します。

日本酒ができるまでお米・米こうじ・水から、およそ60日

原料を整える

  1. 精米せいまいお米の外側を削って磨く削る玄米の外側を少しずつ削る枯らしからし削ったお米を休ませる数週間ほどかかる時間70%で約12時間、50%で約2日
  2. 洗米・浸漬せんまい・しんせき洗って水を吸わせる洗米せんまいぬかを洗い落とす浸漬しんせき水を吸わせる。秒・分単位で計ることも水切りみずきり余分な水を切る一晩ほどかかる時間数分〜数時間(秒単位で計ることも)
  3. 蒸米じょうまい甑(こしき)などで蒸す蒸す甑(こしき)⁠や蒸米機で蒸す40〜60分ほど放冷ほうれい使い道に合う温度まで冷ますこうじ用は30℃台かかる時間約1時間
  4. 製麹せいぎく麹室でこうじを育てる引込みひきこみ蒸したお米を麹室へ0時間目床もみとこもみ種麹をまいて、もみ込む数時間後切返しきりかえし固まりをほぐして混ぜる盛りもり小分けにして箱などに盛る2日目の朝ごろ仲仕事なかしごと混ぜて、こもった熱を逃がす仕舞仕事しまいしごと溝をつけて温度を整える出麹でこうじできたこうじを部屋から出す引込みから約40〜55時間かかる時間約2日(40〜55時間ほど)

仕込む

  1. 酒母しゅぼ酵母をたくさん増やす仕込み水・こうじ・乳酸・酵母に、蒸したお米を1日目(速醸)打瀬うたせ低い温度で、しばらく置く暖気入れだきいれ少しずつ温めて、酵母を増やす枯らしからしもろみに使うまで休ませるかかる時間速醸で約2週間、生酛・山廃で約1か月
  2. もろみ三段仕込み3回に分けて仕込み、ゆっくり発酵甘口留添のあとに、甘酒やもち米などをもう一度加える「四段仕込み」⁠で、甘さを足すことも貴醸酒仕込み水の一部を、お酒に替えて仕込む。成分の濃いお酒に初添はつぞえ1回目の仕込み1日目踊おどり仕込みを休み、酵母を増やす2日目仲添なかぞえ2回目の仕込み3日目留添とめぞえ3回目の仕込み4日目発酵はっこう泡の姿が、筋泡・高泡・玉泡などと変わっていく留添から20〜30日ほどかかる時間仕込み4日+発酵20〜30日ほど

仕上げる

  1. 上槽じょうそうしぼって、お酒と酒かすに分けるスパークリング活性にごりは、粗くこすだけ。酵母が生きたままで、発酵が続く荒走りあらばしり最初に出る、白くにごったお酒中取りなかどり中ほどに出る、澄んだお酒(中垂れとも)責めせめ最後に力をかけてしぼるかかる時間機械で半日〜1日、槽搾りは2日ほど
  2. おり引き・ろ過おりを沈めて分け、すっきりさせるおり引きおりびき静かに置いて、上澄みを分ける上槽の5〜10日後ほどろ過ろか珪藻土や炭などでこすかかる時間数日置いてから
  3. 火入れひいれ60〜65℃ほどに温めて落ち着かせるふつうの酒貯蔵の前と、瓶詰めの前の2回生酒一度もしない(本生)生貯蔵酒生のまま貯蔵し、瓶詰めのときに1回ひやおろし春、貯蔵の前の1回だけ。瓶詰めのときはしない(生詰め)新酒決まりはなく、生のものも、火入れしたものもあるスパークリング決まりはなく、生のものも、火入れしたものもあるかかる時間ふつうは貯蔵前と瓶詰め前の2回
  4. 貯蔵・熟成タンクで寝かせて味をととのえるふつうの酒冬に造り、一夏寝かせて、秋口から順に出す新酒その冬にしぼった若いお酒。冬から春(多くは11〜3月)⁠に出る生貯蔵酒生のまま、低い温度で寝かせるひやおろし夏を越して味がのり、秋(9〜11月ごろ)⁠に出す古酒前の年度より前に造ったお酒。何年も寝かせた熟成酒もかかる時間半年〜1年ほど
  5. 割水・瓶詰めわりみず・びんづめ水で15%ほどに調えて詰める瓶内二次発酵酵母が生きたまま瓶に詰め、瓶の中でもう一度発酵して泡に炭酸ガスできたお酒に、あとから炭酸ガスを入れる割水わりみず18〜20%ほどの原酒を、水で15〜16%ほどに瓶詰めびんづめ瓶に詰めて栓をする(火入れのお酒は、ここで2回目)かかる時間出荷の前に

並行複発酵(へいこうふくはっこう)

もろみのタンクの中では、こうじがでんぷんを糖に変える「糖化」⁠と、酵母が糖をアルコールに変える「発酵」⁠が同時に進みます。6〜15℃ほどで、20〜30日ほど。

お酒が出る時期のめやす

酒造りは冬が中心です(設備のある蔵では一年中)。新酒・しぼりたては冬から春、ひやおろしは秋(9〜11月ごろ)。ふつうの酒は一夏寝かせて、秋口から順に出ます。夏酒・春酒は蔵ごとの季節の限定品で、決まった定義はありません。

1. 精米(せいまい)⁠ お米を磨く

酒造りでは、玄米の外側を削った白米を使います。お米の外側に近いところほど、たんぱく質や脂肪が多く含まれています。たんぱく質が多すぎるとくどい味に、脂肪は吟醸酒の華やかな香りが生まれるのを妨げるため、外側を削って使います。

ふだん食べるお米は1割ほど削りますが、日本酒では、普通のお酒で3割ほど、吟醸酒では4割以上を削ります。

削ったあとに残った割合が「精米歩合」⁠です。精米歩合70%の白米を1kg作るには、玄米が1.4kgあまり必要です。

2. 洗米・浸漬(せんまい・しんせき)⁠ 洗って水を吸わせる

磨いたお米についたぬかを洗い落とし、水に浸して水を吸わせます。

浸す時間は、お米の品種や硬さ、精米歩合によって、数分から数時間までさまざまです。よく磨いたお米は水を吸うのが早いため、秒単位で時間を計りながら吸わせます(限定吸水)。

3. 蒸米(じょうまい)⁠ 蒸す

水を吸わせたお米を、炊くのではなく蒸気で蒸します。おこわのように、外は硬く中はやわらかく、一粒ずつばらばらになるのが良い蒸し米です。

昔ながらの木の桶「甑(こしき)」⁠を使う蔵と、ベルトコンベアで運びながら蒸す機械を使う蔵があります。

4. 製麹(せいぎく)⁠ こうじを造る

蒸し米の一部に、こうじ菌(黄こうじ菌)⁠の胞子をふりかけ、30℃ほどに暖めた「麹室(こうじむろ)」⁠で約2日(50時間近く)かけて育てます。

こうじは、お米のでんぷんを糖に変える働きを持ちます。酒造りの中でいちばん手間がかかり、むずかしい作業とされ、経験を積んだ蔵人が受け持つことが多い工程です。

こうじにするお米は、全体の15〜25%ほどが目安です。

5. 酒母(しゅぼ)造り 酵母を増やす

こうじ・蒸し米・水に酵母を加え、アルコールを生み出す酵母をたくさん増やしたものが「酒母(もと)」⁠です。

酒母の造り方には、主に3つあります。

造り方どんな方法か日数の目安
生酛(きもと)自然の乳酸菌に乳酸を作らせる昔ながらの方法。桶の中でお米をすりつぶす「山卸し(やまおろし)」⁠をする約1か月
山廃(やまはい)生酛の「山卸し」⁠をやめた方法(山卸廃止酛)。乳酸菌の働きを使う点は同じ約1か月
速醸(そくじょう)はじめから乳酸を加える方法。雑菌に汚染されにくい生酛・山廃の約半分

乳酸は、酵母の苦手な雑菌が増えるのを抑えてくれます。山廃と速醸は、明治37年(1904年)⁠にできた国の醸造試験所で生み出されました。

もろみの桶を櫂でかき混ぜる蔵人(イメージ)
※イメージ(AIで作成)

6. もろみ 三回に分けて仕込む

酒母に、こうじ・蒸し米・水を加えて大きなタンクで発酵させたものが「もろみ」⁠です。

いっぺんに加えず、4日かけて3回に分けて仕込みます(三段仕込み)。

  • 1日目「初添(はつぞえ)」⁠:全体の約6分の1
  • 2日目「踊り(おどり)」⁠:仕込みを休み、酵母が増えるのを待つ
  • 3日目「仲添(なかぞえ)」⁠:全体の約3分の1
  • 4日目「留添(とめぞえ)」⁠:全体の約2分の1

少しずつ量を増やすのは、酵母の濃さが薄まらないようにして、発酵を安全に進めるためです。

もろみは6〜15℃ほどの低い温度で、20〜30日ほどかけて発酵します。

三段仕込み 4日かけて3回に分けて全体の量に対して、仕込む割合
  1. 酒母しゅぼ(もと)小さなタンクで、こうじ・蒸し米・水に酵母を加え、酵母をたくさん増やしたもの。これに少しずつ加えていく。仕込む量仕込むお米全体の7%ほど
  2. 1日目 初添はつぞえ酒母をすべて大きなタンクに移し、こうじ・蒸し米・水を、全体の約6分の1だけ加える。酒母を移すすべての酒母を大きなタンクへ約6分の1を加えるこうじ・蒸し米・水仕込む量約6分の1
  3. 2日目 踊りおどり仕込みを休み、酵母が増えるのを待つ。仕込む量休み
  4. 3日目 仲添なかぞえこうじ・蒸し米・水を、全体の約3分の1加える。仕込む量約3分の1
  5. 4日目 留添とめぞえ残りの約2分の1を加えて、仕込みは終わり。ここから、もろみが20〜30日ほどかけて発酵する。仕込む量約2分の1

2日目の「踊り」⁠は仕込みを休み、酵母が増えるのを待ちます。少しずつ量を増やすのは、酵母の濃さが薄まらないようにして、発酵を安全に進めるためです。いっぺんに加えると、酵母や酸が薄まりすぎて、雑菌が増えやすくなります。仕込みの温度は、回を追って少しずつ下げていきます。

日本酒の特徴「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」

もろみの中では、こうじがお米のでんぷんを糖に変える「糖化」⁠と、酵母が糖をアルコールに変える「発酵」⁠が、同じタンクの中で同時に進みます。

これを並行複発酵といい、日本酒の大きな特徴です。発酵が終わるころには、アルコール分が20%近くにもなります。

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7. 上槽(じょうそう)⁠ しぼる

発酵を終えたもろみをしぼり、お酒(液体)⁠と酒かす(固体)⁠に分けます。しぼり方には主に3つあります。

  • 自動圧搾機(あっさくき):今もっとも広く使われる方法。空気にふれにくく、効率よくしぼれます。
  • 槽搾り(ふなしぼり):もろみを袋に詰めて「槽(ふね)」⁠に並べ、上から圧をかけて、時間をかけておだやかにしぼります。
  • 袋吊り(ふくろづり):もろみを入れた袋を吊るし、圧をかけずに、自然にしたたり落ちる「しずく」だけを集めます。

しぼり始めに出てくる白くにごったお酒を「あらばしり」、そのあとを「中垂れ(なかだれ)」、最後に圧をかけてしぼり出すお酒を「責め(せめ)」⁠と呼びます。

3つのしぼり方 上槽(じょうそう)もろみを、お酒と酒かすに分ける
  1. もろみ発酵を終えたもろみ。お酒(液体)⁠と、お米の溶け残りなどの固形分がまざって、にごっている。
  2. しぼる道具へいれるしぼり方には主に3つある。自動圧搾機(あっさくき)もろみを機械に入れる。今もっとも広く使われる方法槽搾り(ふなしぼり)もろみを酒袋に詰めて、「槽(ふね)」⁠の中に並べて積む袋吊り(ふくろづり)もろみを入れた酒袋を吊るす
  3. しぼる液体のお酒と、固体の酒かすに分けていく。機械で機械で圧をかけて、しぼる上から上から圧をかけて、時間をかけておだやかにしぼる圧をかけない自然にしたたり落ちる「しずく」だけを集める
  4. あらばしりしぼり始めに出てくる、白くにごったお酒。袋吊り始めにしたたるお酒も、にごっている
  5. 中垂れなかだれあらばしりのあとに出てくるお酒。袋吊り圧をかけないまま、しずくを集めつづける
  6. 責めせめ最後に圧をかけて、しぼり出すお酒。自動圧搾機・槽搾り最後に圧をかけて、しぼり出す袋吊り圧をかけないので、責めは無い
  7. お酒と酒かすにわかれるしぼったお酒(液体)⁠と、あとに残る酒かす(固体)⁠に分かれる。

どの方法でも、もろみをしぼって、お酒と酒かすに分けます。しぼったお酒は、このあと「8. おり引き・ろ過」⁠へ。

8. おり引き・ろ過 すっきりさせる

しぼったばかりのお酒は少しにごっています。数日置いて、沈んだ「おり」⁠と上澄みを分け(おり引き)、ろ過して透明にします。

ろ過をしないで出荷するお酒が「無ろ過」⁠です。

9. 火入れ(ひいれ)⁠ 温めて落ち着かせる

お酒を60〜65℃ほどに温めることを「火入れ」⁠といいます。微生物を殺菌し、香りや味を変えてしまう酵素の働きを止めて、品質を安定させるためです。

ふつうは、貯蔵する前と瓶に詰める前の2回行います。

  • 火入れを一度もしないお酒が「生酒」
  • 貯蔵前だけ火入れをしたお酒が「生詰め酒」
  • 貯蔵前は火入れをせず、瓶詰めのときだけ火入れしたお酒が「生貯蔵酒」
  • 秋に出る「ひやおろし」⁠は、貯蔵前に一度だけ火入れをし、二度目をしないで出荷するお酒です

10. 貯蔵・熟成 寝かせる

火入れしたお酒をタンクで半年から1年ほど寝かせ、味をととのえます。冬から春に造ったお酒は、夏を越して秋ごろに味がまろやかになります(秋あがり)。

11. 割水(わりみず)⁠・瓶詰め 仕上げる

貯蔵中のお酒はアルコール分が20%ほどあります。出荷前に水を加えて15%ほどに調えるのが「割水」⁠です。割水をしないお酒が「原酒」⁠です。

最後に、もう一度火入れをして瓶に詰め、蔵から出荷されます。

冬の夜、仕込みの桶をのぞきこむ杜氏(イメージ)
※イメージ(AIで作成)

冬に造る「寒造り(かんづくり)」

日本酒が冬に造られるようになったのは、江戸時代からです。寛文7年(1667年)⁠に幕府が秋のお彼岸ごろからの新酒造りを禁じ、その決まりがくり返されるうちに、冬の造りに集まっていったと考えられています。冬に造ったお酒は質が良かったことも理由とされます。

杜氏(とうじ)⁠と蔵人(くらびと)

酒造りの最高責任者が「杜氏」、杜氏のもとで働く人たちが「蔵人」⁠です。

昔は、冬の農閑期に各地から出稼ぎに来る職人たちが酒造りを担い、南部杜氏・越後杜氏・能登杜氏など、各地に杜氏の集団が生まれました。今は、蔵の社員が杜氏を務める「社員杜氏」⁠や、蔵元自身が造る「蔵元杜氏」⁠も増えています。

酒蔵ものがたりで読む

三代目が、ラジオで酒造りの現場を語った回です。

  • 第1回「ひやおろし」
  • 第14回「無垢の酒」(冬の造り)⁠ 2027年1月22日に公開予定
  • 第15回「立春朝しぼり」⁠ 2027年1月29日に公開予定
  • 第16回「無濾過と素濾過」⁠ 2027年2月12日に公開予定
このページの出典(参考にした資料 9件)

このページは、国や公的機関、業界団体、造り手、研究機関などの資料で確かめたことをもとに、店の言葉でまとめています。リンク先は2026年10月に確かめたもので、その後に移ったり変わったりしていることがあります。外国語の資料もあります。

  1. 日本酒造組合中央会「日本酒の製造工程」⁠ japansake.or.jp
  2. 日本酒造組合中央会「日本酒用語集」⁠ japansake.or.jp
  3. 月桂冠 gekkeikan.co.jp
  4. 白鶴 hakutsuru.co.jp
  5. 酒類総合研究所「お酒のはなし 清酒1」⁠ nrib.go.jp
  6. 国税庁 nta.go.jp
  7. 酒類総合研究所「清酒の商品ラベルの読み方」⁠ nrib.go.jp
  8. 日本酒造組合中央会 japansake.or.jp
  9. 月桂冠「原料米の精米と蒸し」⁠ gekkeikan.co.jp

20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。
妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。
飲酒運転は法律で禁止されています。お酒は適量を。